第1話 早期の引退と事業承継
20代に会社を立上げし二十数年、がむしゃらに働いてきた。
その甲斐あってか会社は右肩上がりに成長を続けた。
事業は軌道にのり全国展開、スタッフも増えて順風満帆の時、社長の私は多忙を極めていた。
当時私は44歳。まだまだ若い経営者だろう。
しかし自分の中では50歳で一区切りと考え、事業譲渡を考えていた。
まったくのアーリーリタイヤというより次のステージに挑戦したいという気持ちがあった。
今の事業を続けながら新しいことを立ち上げるのが一番良いのは分かっているが、
不器用な私には両立は難しく感じた。
今の事業を次の経営者に承継し、私は引退し次の新規事業に専念する。
そんな都合よくいかないとは思いながらも、良い方法はないか考えてみた。
考えられる方法
①社内スタッフに経営を任せる
②外部から経営者を連れてくる
③M&Aで株式譲渡しパートナーと組んでさらなる発展を目指す
④このまま死ぬまで経営を続ける
①社内スタッフに経営を任せる
これが一番しっくりくるし、周りの賛同も得られるだろう。
しかし社長として会社の全責任を社員の一人が抱えられるのだろうか?
経営全般のことや運営資金の借入の連帯保証。
もし売り上げが下がったら? 天災等の不足の事態が起こったら?
そんな事になればほっとけないし、再び私が社長に戻らざるを得ないことは容易に想像がつく。
60代になったG社長はNo.2のスタッフに社長を任せ、自身は会長職として
自分の趣味や社会貢献に没頭する。
半年もたたないうちに新社長についていけない社員が出始め離職者が増えた。
社内では不穏な空気が広がりはじめ、やがて業績はゆっくり下がり始める。
見かねたG社長は1年半後にまた社長へ復帰することになる。
そのあと社長を務めたNo.2は居づらくなり退職、会社は元の状態より悪くなり
閉塞感につつまれた再スタートとなった。
これは社内スタッフへの事業継承のあるあるパターンだ。
問題は新社長の器の問題と、経営はNo.2に任せたが資本(株式)は手放してないので
どうしても口を出してしまう。そんなパターンだった。
全責任を引き受ける新社長も大変だし、株式譲渡も考えると社員がそんな大金を支払えない
のが現実である。
②外部から経営者を連れてくる
世の中にはプロ経営者という人達がいて、一時的なつなぎ役やオーナーの代わりに継続的な
経営をしてくれる優秀な人材はいる。
後継者である息子が若い場合などに中継ぎで登場する場合も多い。
アップルやマクドナルド出身の原田泳幸さんやローソンからサントリーに移った
新浪剛史さんなどが有名どころだろう。そこまでの大物でないにしろ元上場企業の
役員クラスなどは多くいる。
財務や労務、仕組みづくりなどは長けているだろうし零細企業のうちに足りないところだ。
しかしスタッフとの相性が悪かったり、仕事が思ったよりできない場合なども想定できる。
これに株式譲渡も踏まえるとやっぱ根本的な解決にはならないな。。。
③M&Aで株式譲渡し大きな資本と組んでさらなる発展
M&Aでうちを買いたいと思う会社があるかは分からないが大きな資本や優秀な人材が
外部から入ることで、うちの会社にとっては成長エンジンになるだろう。
上場企業のグループ会社になったりしたらスタッフも安心してくれるかな?
条件は社員の雇用を継続することと次の経営陣を送り込んでくることが大前提。
M&Aしたはいいけど買い手企業も忙しいから放置されてるケースもあるらしい。
オーナー経営者だけが卒業し残された社員だけで経営をしていくも売上は右肩下がりになり
買い手企業もほとんど興味をもたないまま廃れた会社も知っている。
誰も幸せにならないダメパターンだ。
これでは会社の成長戦略ではなくオーナーの売り逃げにしかならない。
④このまま経営を続ける
ふつうの選択はこれですね。
せっかく立ち上げた会社だし社長辞めないでしょうよ、もったいないし。
経営もうまくいってたらなおさらね。
しかし今の俺にこれはないな。
手前みそだがうちは優秀なスタッフ多いし「いつかこの会社の社長になりたい」って
思ってるヤツもいる。
そんな中「あと30年私が社長続けます」とか「息子に譲ります」って言ったら
そいつら冷めると思う。それくらいうちのスタッフは活きがいいし前向きな人が多い。
一長一短あるけど現実的なのは③のM&Aなのかな。
社員に全責任押し付けられないし、そんなの俺も気が気でない。
③なら株式譲渡するので次の株主が資本の責任を持つし、
経営は役員達で責任を持つ、これが潔いよいと思う。
資本と経営を分けるのも健全だ。
でもうまく引き継がないと会社は危機に瀕するだろう。
しかし引継ぎをミスると会社は危機に瀕するだろう。
・良い相手の選定
・良い引継ぎ
今までご愛顧いただいてるお客さまにも迷惑かけず、いつも頑張ってる社員のさらなる
やりがいの為に継続的な発展で新たな価値や雇用を生み出す。
お客よし、社員よし、世間よしの三方よしでいける道を探そう。
そう考え始めた。
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